雨が降り始めると、
何とも言えない匂いがしてきます。
アスファルトや土や、
葉っぱや花びら、
そこに少しずつにじんできたみたいな匂い。
表へ出ると、
「あ。」
と思います。
一昨日久しぶりにその匂いがしました。
そうすると必ず思い出す曲があります。
ドボルザークの交響曲第9番「新世界より」の第2楽章。
「家路」というタイトルでも知られていますよね。
小学校の頃、「家路」は下校の音楽でした。
ある日の放課後、うっかりのんびり学校に残って友達と遊んでいたら、
雨が降ってきました。
その時に、校庭や学校の周りの草地からあの雨の匂いがして。
急いで帰ろうとしていると、
下校を促すメロディーが校舎のスピーカーから流れ出して、
後ろからせっつかれるような気がしたものです。
しかも、通学に片道40分くらいかかっていたので、
ちょっと遠かったんですね。
もちろん、今みたいに携帯電話もありませんでしたから、
「あ、雨だ。お母さん心配してるかな。」
と、さらに気が急いてきて。
雨で少し泥になったあぜ道を、こけないように気をつけながら、
ランドセルしょって早足になる自分が見えてきます。
雨の匂いと、「家路」と、早歩きで帰る小学生の自分、
私にとっては1セットなのです。